When I wrote the following pages, or rather bulk of them,
I lived alone, in the woods, a mile from any neighbor,
in a house which I had built myself, on the shore of
Walden Pond, in Concord, Massachusetts, and
earned my living by the labor of my hands only.
『以下の項、というよりもその大部分を書いたとき、
私はどの隣人からも1マイル離れた森のなかに
ひとりで暮していた。マサチューセッツ州
コンコードにあるウォルデン湖のほとりに
自分で建てた小屋を住処とし、手を使った
労働だけで生活の糧を得ていたのである。』
(飯田 実・訳)
2年間、ウォルデン湖のほとりで自給自足の生活を送り、
その日々と思索を書き記したヘンリー・ソローの
『森の生活』。その舞台となったウォルデン湖が、
ボストンから西へ30kmの距離にあります。
本当は全部読み終えてから訪れたかったのですが、
タイミングとお天気がぴったり合った先週末、
まだ読みかけの上下巻を持って出かけてきました。
鏡のよう、と描かれたウォルデン湖。もうずいぶん
気温が上がってきたので、おじいさんやちびっこちゃんが
水に入り、のどかな昼下がりを迎えていました。
湖の入り口に、ソローが建てた小屋が復元されています。
I went to the woods because I wished to live deliberately,
to front only the essential facts of life, and see if I could not
learn what it had to teach, and not, when I came to die,
discover that I had not lived.
I did not wish to live what was not life, living is so dear.
『私が森へ行ったのは、慎重に生きたかったからである。
人生の本質的な事実のみに直面し、人生が教えて
くれるものを私が学べないかどうか試し、
そして死ぬときに、自分が生きていなかったと
気付くことのないようにするためである。
私は人生ではないものを生きたくはなかった。
人生はとても大切なものだから。』
(上岡 伸雄・訳)
湖のまわりには散歩道があり、一周できるように
なっていました。歩いて2時間ほどの道のりです。
途中で、初めて自然のヘビを見ました!
2mはありそうな大きなヘビが、もうずいぶん弱って
動かずにいたのですが、どこからともなくもう1匹
小さなヘビが現れ、心配そうに大きなヘビの体を舐めて、
すぐ横に寄り添うように丸くなったのです。
初めは恐る恐る遠巻きに見ていたのですが、
いつの間にか絵本の世界にまぎれこんだようでした。
ウォルデン湖からすぐのコンコードの街は19世紀頃、
ソローを初め、エマソン、オルコットなど
名だたるアメリカの文士が暮らしていたそうです。
今もゆかりの建物や墓地が残っていました。
オルコットが『若草物語』を書いたオーチャードハウスと、
お父さんが庭に建てた「哲学の家」。
残念ながら閉館していたので、外観だけ見てきました。
静やかな新緑の中に、ソローの言葉のヒントがキラキラと
散りばめられていました。
今回は1番いい季節に訪れ、「自然と調和して生きる」
美しい場面ばかりを目にしてきましたが、また機会を
作れたら、冬の、本当に厳しい季節にも訪れてみたいです。